「快適な住まい」とは・・・?
あなたにとって快適な住まいとは、どんな住まいをイメージするでしょうか?
あなたにとって理想の住まいを思い浮かべてください。
たとえば・・・
真夏は涼しく、真冬は暖かく・・・
収納がたくさんあって整理整頓がしやすい・・・
豪華なユニットバスで、ボタン一つで、いつでもお風呂に入れる・・・
広いお庭があって窓からの眺めがすばらしい・・・
広々としたリビングでパーティーも開ける・・・
書斎や趣味の部屋がある・・・
最新式のシステムキッチンでお料理もラクラク・・・
など、など・・・
人間の欲望は限りがありませんから、住まいに限らず世の中全体が人間にとって、より快適なもの、より便利なものを開発して発展してきました。
しかし、より快適なものや、より便利なものが行き過ぎてしまってはいないでしょうか?
行き過ぎた結果、私たち人間に多くの弊害をもたらしていることにも目を向ける必要があります。
現代人は便利になり過ぎたために、昔の人にとっては当たり前のことが、できなくなっていることが多くありませんか?
たとえば・・・
化学調味料がない時代、「だし」から手作りのご飯は当たり前でした。
毎朝、削りたての鰹節でお味噌汁のだしを取りました。
子どもだった私は、鰹節を削るのが日課で、削りたての鰹節をこっそりつまみ食いしたものでした。
手間ひまかけてつくる自然食が当たり前でした。
今では、だしの取り方を知らない主婦が増えています。
お風呂を炊くのも薪で炊きました。
建設工事で出た廃材を薪にして、お風呂を炊いていました。
それこそ、捨てるものの再利用、省エネです。
薪で炊いたお風呂のお湯はやわらかくて、なぜだか良くあたたまりました。
今では、薪で焚き付けができる人も少なくなりました。
誰でも、不快より快適が良いけれど、快適すぎに慣れてしまって不快なものに対応ができなくなってしまっていることも多くあります。
真夏にエアコンに頼って、暑い中で過ごすことができない体質になり体調を崩す人が増えています。
夏のエアコン生活は冷え性になったり、熱中症の人が増えている原因のひとつと言われています。
住まいも省エネ住宅化が進み、密閉度が高くなりました。
密閉度が高くなって、空気中の化学物質の逃げ場もなくなりました。
毎日、生活用品から発散される化学物質は逃げ場がなくなった結果、空気中の化学物質濃度が高くなってしまいます。
化学物質満載の部屋で毎日を過ごすこととなり、化学物質過敏症を増やし続けているのです。
省エネ住宅促進は一側面から見たら、とても素晴らしいものです。
室内温度が外気に左右されなくなり冷暖房費の節約ができるようになりました。
寒い家が少なくなって、真冬にお年寄りが、寒いお風呂で突然死することも少なくなりました。
真冬でも室内ではあたたかで薄着で過ごすことも可能になりました。
一方、エアコンに頼った生活で育った子供は、エアコンなしの生活はありえないというでしょう。
それは、暑さ、寒さに耐えうる人間の能力を奪うことになって軟弱な人間が増えていることに繋がっています。
自動の便器に慣れてしまった子供は普通の便器を使うことができなくなってしまうなんてことが起きています。
和式便器が使えない子供も多くなっています。
お風呂も蛇口をひねればお湯が自動で出てくるのが当たり前・・・
電子レンジに入れれば、すぐに食べたいものを食べることができる・・・
便利な生活は人間の知恵と能力、想像力を奪うことにもなりかねません。
昔の人たちは、便利なものの代わりに、快適に過ごすために知恵を働かせました。
夏の暑さをしのぐために打ち水や風鈴の音、日本人としての感性を上手に使いました。
昔に戻ることが良いことではありません。
便利すぎる、快適過ぎる事の弊害も認識する必要があるのです。
人間には環境に適応する、順応するという素晴らしい能力が備わっています。
快適や便利になることに適応能力が使われて、知恵を働かせる能力、想像力を奪っているとしたら・・・?
便利な世の中だからこそ、あまり快適ではない、あまり便利ではないことにも価値があるという認識が必要なのです。